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染付花鳥文水指 そめつけかちょうもんみずさし
高25.9cm 口径15.4cm 明治時代
[佐世保市蔵]
一点ものとしてあえてていねいに、意識的に細密化された絵付けが施された作品と考えられる。石と、そこから茎葉を伸ばし、花を咲かせる牡丹の絵柄は19世紀前半以前の時代にはない。孔雀と花と蝶の組み合わせは明治時代に好まれたモチーフであること、さらに正面がどこであるのか明快になっていること、上下部にパターン化された縁飾りがやや欧米風であることなどから、明治時代の作と考えられる。
正面性をもたせながらある程度モチーフを全体に散らす描き方は、写実性が重視され、輸出用の製品がつくられた明治時代に一般的であった。縦にやや伸びながら丸みを帯びた壺の形は江戸後期には見られず、明治時代以降に欧州文化との接触によって生まれたと思われる。
現在の漆塗りの木蓋を取ると口縁の蓋受部に溝があることから、本来は水差しではなく蓋つき壺であり、飾りのついた蓋がのせられていたのではないだろうか。
余白の多い絵画的な絵付と、繊細な線の縁飾りが上下部のみに抑えられたシンプルな組み合わせが、有田とは異なるみかわち焼らしさを見せる。
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